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体温計はおそらくどの家庭にも一台は必ず常備している計測器のひとつと言えるのではないでしょうか?
風邪をひいたかな?もしそう感じたらまず体温計で発熱がないかどうかを真っ先に確認しますね。
この体温計は昔はガラス管内に水銀を入れ水銀が熱膨張する仕組みを利用した水銀体温計が主流の時代がありました。
それほど昔の事でもありませんが平成生まれの子供たちであれば水銀体温計を知らない子供たちも多いのかもしれません。
尚、現在最も広く普及しているのはサーミスタと呼ばれるセラミック抵抗体を使用した電子体温計です。
また乳幼児などじっとしていられない赤ちゃんの体温を測る際には耳で体温を測定可能な耳式体温計も広く普及するようになってきました。
この他、鼻やおでこなどに触れる事で測定が可能な電子体温計や赤外線体温計も多く市販化されております。
日本人の体温の正常値、いわゆる平熱の体温は36.89±0.34度の範囲とされております。
実際に体温計で計測できる体温の範囲は35度~42度の範囲内になっておりますが、これも人間が生命を維持できる範囲内しか使用する必要がないとされている為です。
しかし体温の正常値の範囲を見ても解る通り、私たちの体温は非常に小さな範囲内で体温が維持されていることがわかります。
この僅かな範囲内で上下する体温ですから、出来る限り正確な体温数値を測定したいものです。
※体温の正常値
日本人の平熱の体温は36.89±0.34度の範囲
一言に体温計と言っても体温計には実に様々な種類があることがわかったかのぉ。
ではここでは、より正確な体温を測定するために覚えておきたい知識について一個ずつ解説をしていくことにしよう。
使用する体温計は特に問わないのじゃが、最も広く普及しておる電子体温計や水銀体温計、そして赤外線体温計を基本としてここでは確認していくことにする。
ではまず最初は体温の測定方法と測定部位の特徴について見ていくとしよう。
海外のドラマ等を見ていると口に体温計を加えている子供の姿を見かけることがあるかもしれん。
これは舌下温で体温測定を行なっている時のシーンで海外ではわりと広く行われておる体温測定方法のひとつじゃ。
体温測定で舌下温の測定を行う利点は、より口の内部の体温を計測できることから、より体内に近い体温を測定できることが可能となる点にある。
舌下温測定では、舌下の奥深くまで体温計をしっかりと挿入し口を閉じ外気の流入を防ぐ事が大切。
体内中心部に近い体温を計測できるため、基礎体温の測定では舌下温で体温を記録するのが通常となっておるのじゃ。
計測時間は約3分程度。正確な数値を測定したい場合は、実測式の体温計で10分以上の計測が必要となる。
前述した通り舌下温はより正確な体温を測定する際には体内に近い体温を測定できる点からも有能な測定部位であることは間違いないのぉ。
しかし、衛生面という観点から考えた場合、他人が舌下温測定を行った体温計を自分が使用する際には、仮に消毒処置がなされていたとしてもやはり抵抗感を感じる部分があるものじゃ。
これは、家族間であっても同様で舌下温による体温測定を行う場合は自分専用の体温計を準備する必要があると言えるかもしれんのぉ。
舌下は測定部位としては優秀であるが、体温計を共有するという点ではややデメリットも併せ持つ測定部位である点も覚えておいた方が良いじゃろう。
脇の下で体温を測定する方法は言うまでもなく日本では最もオーソドックスな体温の測定方法じゃ。
病院の診察を受けに行くとまず最初に「体温を計って下さいね」と言われるが、このような公共の病院などでも着衣のまま人目を気にせずに体温測定が可能である為、体温の測定部位としては広く受け入れられている測定部位であるとも言えるのじゃ。
脇の下で体温を測定する利点は、衛生面などを深く気にする事無く体温計を共有できる点。そして着衣のまま計測が可能であるため測定が容易である点などがあげられる。
また、脇の下には鎖骨下動脈と繋がる腋窩動脈が脇の下の皮膚の表面近くを通っている為、より体内温度に近い体温を測定することも可能である点も大きな利点と言えるじゃろう。
高熱が出ている時は、おでこを冷やすよりも脇の下を冷やした方が熱が下がりやすいのはこの腋窩動脈を通じて血液温度を冷やすことが可能となる為なのじゃな。
皮膚の表皮近くを流れている動脈は他にも多数存在するが、体温計を固定する事を考慮するとやはり脇の下は総合的に見ても効率の良い測定部位であると言えるじゃろう。
脇の下で体温測定を行う場合の注意点は、体温を測定中に動きまわったりしないこと。そして脇の下にしっかりと挟み込んでおくことが大切じゃ。
体温計をしっかり挟み込んいなかったり、ずれてしまったりした場合は正確な体温を測定することができない。
また高熱が強く発汗が多い場合なども測定数値がぶれやすく、脇の下は測定状況に大きく左右される測定部位であるという点は覚えてくべきポイントじゃのぉ。
直腸温による体温の測定を経験されたことがある方はおそらくかなり少ないじゃろう。
この直腸温による体温測定は肛門から体温計を挿入し直接腸内の体温を計測できる事からも舌下温測定以上により体内の正確な体温を測定できる方法と言えるのじゃ。
肛門に体温計を挿入して体温測定を行うメリットは、何よりも正確な体温の測定が可能となっている点にある。
また外気に触れる部分でもないため、外部からの影響を受けにくい部位でもある事から、死体の検視などでもこの測定方法が利用されておるのじゃ。
しかしより正確な体温の測定が可能である反面、衛生面や公共の場での利用も難しく実用性の高い測定部位とは言えない点がデメリットであると言えるじゃろう。
小児科などで乳幼児の体温を測定する際には、耳の中に体温計を軽く添えるだけで数秒で体温を測定できてしまう耳式体温計が広く利用されておる。
家庭用の耳式体温計も安価で販売されるようになったが、この耳式体温計で測定しているのは鼓膜から放射されている赤外線の量を測定しておるのじゃ。
耳式体温計のように体から放出されている赤外線量を測定することで体温を計る最大の利点は何よりも計測時間が短い点にある。
実際に使用してみると解るが耳式体温計の計測時間は約1秒~3秒程度となっておる。
これは、じっとしていることが難しい乳幼児や、救急医療などの早急にバイタルサインデータが必要となる場面での測定では欠かせない測定方法であると言えるじゃろう。
赤外線は体中の全ても部位から放出されておる事をご存知じゃろうか?
赤外線カメラは真っ暗闇でもまるで昼間のように明るく映像を映しだす事ができる。
これは我々ヒトに限らず地球上のあらゆる物質が僅かながらも赤外線を放出しておる事を意味しておるのじゃな。
その為、実際に赤外線センサーによって体温を測定する場合は、どの部位でも測定自体は可能となっておる。
耳の鼓膜を体温測定部位としているのは、鼓膜は外気にさらされていない部分でもある為、より体内の体温に近い温度を測定しやすい部位である為なのじゃ。
耳式体温計を使用して体温測定を行う際のデメリットは、正確性に欠けるという点にある。
これは数秒後に再度測定を行うと僅かな誤差を生じるケースが多いことからも伺える。
数秒で測定できるという大きなメリットがある分、やはりより正確な体温を測定する場合は、電子体温計や水銀体温計に軍配があがると言えるじゃろう。
デジタル式の電子体温計の中には短時間で体温の測定が可能な体温計機能が装備されておるものも多い。
これらの電子体温計は30秒程度で体温を測定しまう訳じゃが、赤外線センサーが付いている訳でもないのに何故ここまで短時間で体温の測定であるのか気になる方も多いはずじゃ。
このからくりは、電子体温計が体温計の数値上昇比率からおおよその予測数値を算出して数値を弾き出しているからくりとなっておる。
要は、短時間で測定が完了する電子体温計が表示する体温は予想体温の数値という訳なのじゃ。
その為、予測式の測定方法は正確性に関しては劣る分部分が多く測定の度に体温が変化することも多いのじゃ。
電子体温計でより正確な体温を測定したい場合は、予測式よりも実測式の体温計を選択することが大切じゃな。
体温測定を行う際により正確な測定を行うためには、(直腸 > 舌下 > 脇の下)の順で正確性の高い測定が可能となることはここまで解説してきた通りじゃ。
また測定方法としては(実測式 > 予測式)となり正確な体温を計測するには実測式がやはり優れておる。
これらを踏まえて以下に正確性の高い体温の測定方法を数値化した表を作成しておいた。
※耳式体温計は測定部位が耳のみであるため対象に含めておりません
【正確な体温測定方法の一覧表】 | ||||||
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体温計の種類 | 正確性 | 脇の下 | 舌下 | 直腸 | 総合 | |
水銀体温計 | +1 | 2p | 3p | 4p | ☆☆ | |
電子体温計予測式 | 0 | 1p | 2p | 3p | ☆☆ | |
電子体温計実測式 | +1 | 2p | 3p | 4p | ☆☆☆ | |
赤外線体温計(耳式) | 0 | - | - | - | ☆ |
総合の部分では利便性や安全面を加味して星の数を加えたがこれらはあくまで個人的な指標じゃ。
現実的に家庭でも実践が可能な範囲の中でより正確な数値の測定が可能な測定方法は脇の下と舌下を測定部位とした水銀体温計と実測式の電子体温計といったところじゃろう。
またここに衛生面や利便性、そして安全性を考慮すると、おそらく黄色で示しておる実測式の電子体温計を使用して脇の下で測定する方法がベストの体温測定方法と言えるかもしれんのぉ。
何とも平凡な結果ではあるが、脇の下で測定を行う場合はしっかりと体温計を挟み込んでなるべく外気に触れさせないように計測を行うよう心がけておくことじゃ。